安全な結婚式場の選び方 ~突然の破産を避けるために~

1. はじめに
結婚式場が突然破産すると、新郎新婦は金銭的・精神的に大きな打撃を受けます。実際、福岡・佐賀で5つの式場を運営していた「アルカディア」は突然の破産申請準備を発表し、2025年2月26日以降の挙式・披露宴がすべて中止となりました。招待状の送付やドレス選びまで準備を進めていたカップルもおり、内金13万円を支払っていた新郎は「自己破産をされているので返金の可能性は低いのかなって…今まで準備してきたものがあって、すごく虚しいです」と途方に暮れています。このような事態は一生に一度の晴れの日を台無しにし、人生の大切な思い出に深い傷を残しかねません。
だからこそ、事前にリスクを回避する準備が欠かせません。ただ雰囲気や費用だけで式場を決めるのではなく、経営面での信頼性や万が一への対応策までしっかり考えておく必要があります。大切な結婚式を安心して迎えるために、式場選びの段階から注意すべきポイントと、契約時の心構え、さらに万一トラブルに直面した際の対処法までをまとめました。事前の情報収集と備えによって、悲劇を未然に防ぎ、笑顔で当日を迎えられるようにしましょう。
2. 信頼できる結婚式場を選ぶためのポイント
式場選びでは以下の点に注目し、信頼性の高い会場か見極めましょう。
- 経営の透明性を確認する: 式場を運営する会社の財務状況や運営歴をチェックしましょう。可能であれば決算情報や会社概要を確認し、経営が安定しているかを見極めます。上場企業やIR情報を公開している企業は、財務情報や経営状況を開示している分、信用度が高いとされています。設立からの年数や過去の業績推移も調べ、極端な赤字続きではないか注意します。
- 過去のトラブルや評判をリサーチする: 候補の式場名で口コミサイトやSNSを検索し、利用者の評価やトラブル事例がないか確認します。特に「スタッフの対応に不満」「急なキャンセルをされた」といった声がないか要チェックです。またニュース記事や第三者機関の評価(業界紙・専門誌など)があれば目を通しましょう。実際、消費生活センターに寄せられる結婚式に関する相談で最も多いのはキャンセルに関するトラブルだといいます。過去に大きなトラブルを起こした式場でないか、事前に調べることでリスクを減らせます。
- 契約内容を詳細に確認する: 提示された契約書や約款は細部まで読み込み、不明点は質問しましょう。特にキャンセルポリシー(解約料の規定)や、式場都合で式ができなくなった場合の対応(代替措置や返金保証)が明記されているかは重要です。一般的に契約時に支払う申込金や内金は原則返金されないケースが多く、「キャンセル料は基本的に払う必要があります。契約書に記載があるからです」と指摘する専門家もいます。万一自分たちの都合でなく式場側の事情で中止になった場合でも、契約上どのような救済措置があるか把握しておきましょう。疑問点は契約前に納得いくまで担当者に確認し、口頭ではなく書面で約束事を残すことも大切です。
- 経営母体の安定性をチェックする: 式場の運営会社がどのような母体に属しているかも確認しましょう。大手ホテルチェーンや上場企業グループ傘下の式場であれば、経営破綻のリスクは相対的に低い傾向があります。一方、独立系の小規模事業者の場合は急な経営悪化に備えてより慎重になるべきです。運営会社の資本関係(例えば他企業との提携や支援体制)や過去の経営実績を調べ、安定したバックボーンがあるか見極めましょう。今回破産したアルカディアの場合、2020年以降コロナ禍で売上が減少し債務超過に陥っていましたが、こうした徴候は外部からは掴みにくいものです。だからこそ会社の信頼性を総合的に判断し、少しでも不安があれば他の候補も検討する柔軟さを持ちましょう。
3. 契約時に注意すべきポイント
式場と契約を結ぶ際には、以下の点に十分注意してリスクを分散してください。
- 支払いスケジュールを慎重に決める: 式場への支払いタイミングはできるだけ段階的にし、一度に大金を前払いしない工夫が重要です。一般的には契約時に申込金、式の直前までに残金支払いというケースが多いですが、可能であれば支払いを複数回に分けてもらう交渉も有効です。また支払い方法も検討しましょう。例えばクレジットカード払いにしておけば、万一サービス未提供の場合にカード会社経由で支払い停止や返金交渉ができる可能性があります。実際、ある利用者は消費生活センターのアドバイスでクレジットカード会社に支払い停止を依頼し、申込金の返金に成功しています。このように前払いのリスクを極力抑える工夫をしましょう。
- 破産リスクに備えた保険の活用: **ブライダル保険(結婚式総合保険)**への加入も検討に値します。新郎新婦側の都合や不測の事故・災害で式を中止せざるを得なくなった場合、発生するキャンセル費用を補償してくれるのがブライダル保険です。ただし注意したいのは、式場側の倒産は補償対象外である点です。保険はあくまで「自分たちのキャンセル」に備えるもので、式場が経営破綻して式ができない場合には保険金は支払われません。したがって、保険だけでなく他の予防策も組み合わせる必要があります。それでも、例えば新郎新婦や親族の急病・不慮の事故で式延期となった場合などには保険が損失補填に役立つため、加入しておくと安心材料にはなるでしょう。
- 不測の事態に備えた代替プランの準備: 万一予定の式場で挙式できなくなった場合に備え、代替案を考えておくことも重要です。例えば「どうしてもその日程で挙げたい」という場合に備えて、同日程で利用可能な他の式場をいくつかリストアップしておいたり、最悪挙式日程の延期も視野に入れてゲストにも柔軟に対応してもらえるよう調整しておくと安心です。実際、アルカディア破産の際には、ある新郎が急遽別の式場でできないか検討しましたが、打ち合わせの時間が足りず断念し延期を決断しています。このように土壇場で慌てないためにも、「もしもの時は〇〇会場にお願いしよう」「式だけ先に挙げて披露宴は後日にしよう」といったプランB・プランCをあらかじめ家族やプランナーと話し合っておくと良いでしょう。また式場と契約する際に「自社で実施できない場合、系列の別会場を紹介してもらえるか」など確認し、代替措置について取り決めておくこともできます。希望の日程にこだわり過ぎず柔軟な姿勢でいることが、結果的に理想の結婚式を守ることにつながります。
4. 破産や突然のキャンセルに直面した場合の対処法
万が一、契約した式場の破産や急な営業停止に直面してしまったら、落ち着いて次の行動を取りましょう。
- 返金請求の手続き: まずは支払済みの費用の返金交渉です。式場側と直接やり取りして拉致があかない場合は、早めに消費生活センターや弁護士に相談しましょう。各自治体の消費生活センターは、結婚式関連のトラブルも含め様々な消費者相談を受け付けており、法律面のアドバイスや事業者への交渉を代行してくれる頼もしい存在です。実際、あるカップルは消費生活センターに相談し、センター職員が式場と直接交渉してくれた結果、当初返金不可と言われていた申込金10万円を取り戻せました。専門知識を持つ第三者に入ってもらうことで、個人では難しい交渉もスムーズに進むことがあります。また、式場がすでに破産手続きに入っている場合には、破産管財人への届出(債権届)など法的手続きを踏む必要があるため、弁護士に依頼して債権者としての権利を主張することも検討してください。クレジットカード払いをしていた費用については、カード会社に事情を説明してチャージバック(支払い取消)対応を求められる場合もあります。いずれにせよ時間との勝負ですので、動けるところから迅速に行動しましょう。
- 他の結婚式場の紹介サービスを利用する: 突然式場を失った場合でも、結婚式場紹介会社やプランナーに相談すれば代替会場の手配をサポートしてもらえる可能性があります。実際、アルカディア破産の際には福岡市の式場紹介会社「Five.N」が緊急相談窓口を設置し、影響を受けた新郎新婦に別の式場を紹介するサポートを開始しました。発表直後から既に40組以上の相談が寄せられ、「どこに何を相談すべきか分からない状況だと思う。可能な限り希望に沿う形で支援したい」という担当者の声も報じられています。このように、業界には困っているカップルを救済しようと迅速に動くサービスが存在します。全国展開の情報誌(ゼクシィなど)や大手式場紹介サイト、地元のプランナーネットワークなどに問い合わせれば、希望日に対応可能な会場や、事情を汲んで割引してくれる会場を紹介してもらえることがあります。一人で抱え込まず、プロの力を借りてベストな代替策を探しましょう。
- クラウドファンディングやSNSを活用した支援の呼びかけ: 大きな損失を被った場合、最後の手段としてクラウドファンディングで支援を募ることも選択肢に入ります。最近では個人の困難に対してインターネット上で資金支援を呼びかけることが珍しくなく、結婚式費用の立て直しに協力が集まった例もあります(海外では閉鎖した式場に代わる会場費を地域の人々が寄付で賄ったケースも報じられています)。また、日本国内でも今回の件で被害に遭った新郎新婦たちの悲痛な声がSNS上で拡散され、大きなニュースとなりました。SNSで情報発信することで、同じ式場を予約していた他のカップルと連絡を取り合ったり、式場探しに協力してくれる人と繋がれる可能性もあります。場合によっては地元企業や有志が「○○さんたちの結婚式を支援したい」と手を差し伸べてくれることもあるでしょう。もちろん、支援を募る際は誹謗中傷など予期せぬ反応にも注意が必要ですが、多くの人に状況を知ってもらうことで活路が開ける場合もあります。泣き寝入りせず、使える手段は積極的に活用してみてください。
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5. まとめ
結婚式場選びから契約、そして当日を迎えるまで、「万が一」を考えた事前のリサーチと備えこそが何より重要です。華やかな会場や魅力的なプランに飛びつきたくなる気持ちはわかりますが、安易に即決せず経営面の信頼性や契約内容を慎重に見極めましょう。万が一に備えた準備(支払い方法の工夫や保険加入、代替案の検討)を怠らないことで、トラブル発生時にも冷静に対処でき、大切なお金と時間を守ることができます。また、悩んだときは信頼できる専門家の意見を積極的に活用するのも賢明です。経験豊富なウェディングプランナーや消費生活センターのアドバイザー、弁護士など、プロの知見はきっと大きな支えになるでしょう。
一生に一度の結婚式を安心して迎えるために、新郎新婦自らが「安全な式場選び」の主導権を握りましょう。本記事のポイントを参考にリスクを回避し、ぜひ笑顔あふれる最高の一日を実現してください。新郎新婦のお二人が安心して結婚式を迎えられるよう、心から願っています。
Profileこの記事を書いた人
「人の笑顔に多く出会いたい」と思った学生時代。アルバイトとして婚礼会場のサービススタッフを経験したことで「私のイメージしている世界はここだ!」とウェディングプランナーになることを決意しました。
その後は、ウェディング系の専門学校を卒業し、ゲストハウスとホテルでウェディングプランナーに全力投球!新郎新婦さまたちの「ありがとうの涙」に出会えることが本当に幸せだと感じた現役時代でした。
自分自身の結婚に伴い、現在は現場から離れていますが結婚式が大好きな気持ちに変化なし!ウェディングライターとして結婚式の基本知識や定番演出、トレンド情報などを発信しています。
好きなことは読書とお菓子作り。
プランナー駆け出しの頃から「実るほど頭をたれる稲穂かな」をモットーに、何事も初心を忘れず学びの姿勢を大切にしています。